1. 銀行口座はいつ凍結されるか
死亡届を出しただけでは凍結されない
死亡届を市区町村に提出しても、銀行には自動的に通知されません。 銀行口座が凍結されるのは銀行が口座名義人の死亡を知ったときです。
銀行が死亡を知る主なタイミング
- ①遺族が銀行の窓口・電話で死亡の旨を伝えたとき(最多)
- ②銀行側が新聞・訃報欄・SNSなどで把握したとき
- ③口座が長期間未使用となり休眠口座として処理されるとき(10年後)
2. 凍結前にやるべき緊急対策
通帳・カードの場所を確認する
被相続人の通帳・キャッシュカード・印鑑の保管場所を確認しておく。後の手続きで必須になる。
残高・口座情報を記録する
各口座の銀行名・支店名・口座番号・おおよその残高を記録。通帳のコピーを取っておくと安心。
定期引き落としを確認する
電気・ガス・水道・保険料などの自動引き落としが止まると滞納になるため、早めに対応先を確認。
葬儀費用の確保
葬儀費用(平均50〜150万円)は凍結前か仮払い制度を使って確保する。凍結後は窓口手続きが必要。
3. 遺産分割前の仮払い制度(2019年創設)
遺産分割前でも一部引き出せる制度
仮払い上限額の計算式
各相続人の取得額 = 口座残高 × 1/3 × 法定相続分
ただし1金融機関につき最大150万円
計算例
残高600万円、相続人が配偶者・子2人の場合
・配偶者(法定相続分1/2):600万 × 1/3 × 1/2 = 100万円
・子1人(法定相続分1/4):600万 × 1/3 × 1/4 = 50万円
4. 銀行口座の相続手続き 5ステップ
STEP 1
銀行への連絡・相続手続き申請
死亡から1〜2週間以内各銀行の窓口または専用ダイヤルに連絡。「相続手続きの申請をしたい」と伝えると、必要書類の案内を受けられる。
STEP 2
戸籍謄本類の収集
1〜2週間被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本)を各市区町村に請求。相続人全員の戸籍謄本も必要。
STEP 3
遺産分割協議書の作成
遺産分割合意後相続人全員で誰がどの遺産を相続するかを決め、遺産分割協議書を作成。全員の実印・印鑑証明書が必要。
STEP 4
銀行窓口で書類提出・審査
書類提出後2〜4週間各銀行の所定書式に記入し、収集した書類一式を提出。審査・照合が完了したら振り込みまたは窓口払い。
STEP 5
相続税申告(必要な場合)
死亡を知った日から10ヶ月以内遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超える場合は相続税申告が必要。税理士への依頼を推奨。
5. 必要書類の完全チェックリスト
被相続人(亡くなった方)の書類
- 除籍謄本(死亡の記載がある戸籍謄本)
- 出生から死亡まで連続した戸籍謄本・改製原戸籍
- 通帳・キャッシュカード
相続人全員の書類
- 戸籍謄本(各相続人)
- 実印の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
相続内容に関する書類(いずれか)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印押印)
- 公正証書遺言 または 自筆証書遺言(検認済み)
- 家庭裁判所の審判書
銀行所定の書類
- 相続届(各銀行の所定書式)
- 払い戻し請求書(払い戻しの場合)
※銀行により追加書類が必要な場合があります。事前に各銀行の相続センターに確認してください。
6. 主要銀行の手続き窓口一覧
| 銀行 | 主な窓口 | オンライン |
|---|---|---|
| ゆうちょ銀行 | 全国の郵便局・ゆうちょ銀行 | なし |
| みずほ銀行 | 相続センター(電話申込後) | 一部対応 |
| 三菱UFJ銀行 | 相続手続きセンター | 一部対応 |
| 三井住友銀行 | 相続サポートセンター | 一部対応 |
| 楽天銀行 | 郵送・オンライン対応 | あり |
| 住信SBIネット銀行 | 郵送対応 | 一部対応 |
※2026年3月時点の情報。各銀行の公式サイトで最新情報をご確認ください。
7. 手続きにかかる期間と費用
期間の目安
- 戸籍謄本の収集1〜2週間
- 遺産分割協議合意まで可変
- 書類提出〜振込2〜4週間
- 合計(最短)1〜2ヶ月
費用の目安
- 戸籍謄本(1通)450〜750円
- 印鑑証明書(1通)300〜450円
- 銀行手数料無料〜5,500円
- 司法書士報酬5〜15万円
8. 専門家への依頼が必要なケース
- ⚠相続人が3名以上で書類収集が複雑
- ⚠不動産の相続登記(2024年4月から義務化)も同時に行う
- ⚠相続人間で遺産分割について意見が合わない
- ⚠被相続人が複数の金融機関に口座を持っていた
- ⚠農協・信用金庫・証券口座など多様な資産がある
- ⚠海外に資産・口座がある
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よくある質問
銀行口座は、銀行が口座名義人の死亡を知ったタイミングで凍結されます。死亡届を提出しただけでは自動的には凍結されません(市区町村と銀行は連携していない)。遺族が銀行に連絡したとき、または銀行が独自に把握したときに凍結されます。
故人の口座から無断で引き出すことは、原則として相続財産の横領にあたる可能性があります。最も安全な方法は2019年創設の「遺産分割前の相続預金の仮払い制度」を利用することです。1金融機関につき150万円を上限に、仮払い請求ができます。
一般的に必要な書類は①被相続人の除籍謄本(死亡記載の戸籍謄本)②出生から死亡まで連続した戸籍謄本③相続人全員の戸籍謄本④遺産分割協議書(実印・印鑑証明書付き)⑤手続きをする相続人の本人確認書類⑤通帳・カードです。
書類が揃っている場合、窓口申請から振り込み完了まで2〜4週間程度かかることが多いです。戸籍謄本の収集に1〜2週間、遺産分割協議の成立に時間がかかる場合はさらに長くなります。
はい、2019年7月施行の改正民法で「遺産分割前の相続預金の仮払い制度」が創設されました。各相続人は1金融機関につき「残高×1/3×法定相続分」または150万円の低い方まで払い戻しできます。葬儀費用や当面の生活費に充てることができます。
放置した場合、10年が経過すると「休眠預金」となり預金保険機構に移管されます。また相続税の申告期限(死亡を知った日から10ヶ月以内)を過ぎると延滞税・加算税が発生するリスクもあります。早めに手続きを進めることをおすすめします。
ネット銀行(楽天銀行・住信SBIネット銀行・PayPay銀行など)の相続手続きは、各銀行の公式サイトの「相続手続きページ」から必要書類と手順を確認します。書類の提出方法は銀行により異なりますが、郵送対応が中心で一部オンライン申請も可能です。
相続人が1〜2人で遺産分割がシンプルな場合は自分で手続きできることが多いです。ただし相続人が多い、不動産の相続登記も必要、遺産分割で揉めている、海外資産があるという場合は司法書士・弁護士への依頼をおすすめします。費用は5〜15万円程度が多いです。