01遺言書の3種類と比較
遺言書には法律上3種類あります。最もよく使われるのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
02自筆証書遺言の書き方・法的要件
自筆証書遺言は4つの法的要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると遺言書全体が無効になります。
全文を自筆(手書き)で書く
財産目録を除く遺言書の本文はすべてボールペン・万年筆などで手書きが必須。パソコン・ワープロ・代筆は不可。財産目録のみパソコン作成可(2019年民法改正)
不備があると遺言書が無効になる重要要件
日付を記載する
「令和○年○月○日」と具体的な日付を自筆で記入。「○月吉日」「○年○月」など日付が特定できないものは無効。作成した年・月・日をすべて書く
不備があると遺言書が無効になる重要要件
氏名を自筆で署名する
戸籍上の氏名でなくても通称・雅号でも有効ですが、遺言者を特定できることが条件。ただし本名(戸籍名)の使用を推奨
押印する
実印・認印・拇印いずれも有効。ただし実印(印鑑登録証明書と一致)を使うと後の手続きがスムーズ。署名の後に押印するのが一般的
自筆証書遺言 記載例
遺言書
遺言者○○○○(以下「遺言者」という)は、以下のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、長男○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
(所在・地番・家屋番号などを記載)
第2条 上記以外の財産はすべて、妻○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
令和○年○月○日
○○県○○市○○町○丁目○番○号
遺言者 ○○ ○○ ㊞
※上記は参考例です。実際の遺言書は専門家(弁護士・司法書士)への相談をお勧めします。
03無効になるパターンと注意点
自筆証書遺言は形式的な不備で無効になるケースが多くあります。よくある無効パターンを確認しておきましょう。
全文または一部をパソコン・ワープロで作成した
財産目録を除く本文はすべて手書きが必須。パソコン作成は無効
日付が「○月吉日」「○年○月」など不完全
年・月・日すべてを具体的に記載しないと日付不備で無効になる
押印がない・スタンプ印を使った
押印は必須。スタンプ式の認印も原則として有効だが、一般的な認印・実印が安全
代筆してもらった・口述筆記した
自筆証書遺言は遺言者本人が直筆で書くことが必須。代筆は無効
遺言の内容が特定できない(財産・受取人が曖昧)
「全財産を長男に」は有効だが、「銀行の預金」だけでは特定できず紛争の原因に。口座番号・支店名まで記載を
変造・訂正方法が正しくない
遺言書を訂正する場合は、訂正箇所を二重線で消し、欄外に「○行目○字削除○字加入」と記載し、署名・押印が必要
複数人で共同で作成した(夫婦連名など)
民法で「共同遺言の禁止」が定められている。夫婦でも別々に作成が必要
04公正証書遺言の作り方と費用
公正証書遺言は公証役場の公証人が作成に関与するため、無効リスクが極めて低い最も確実な遺言書の形式です。
作成の流れ
遺言内容を決める
財産の分け方・受取人・付言事項などを整理する。必要に応じて弁護士・司法書士に相談
証人2名を用意する
公正証書遺言には証人2名が必要。推定相続人・受遺者・その配偶者・直系血族は証人になれない(利害関係者の排除)
公証役場に予約・原案を提出
最寄りの公証役場(全国300か所以上)に連絡し、遺言の原案・必要書類を提出して内容を確認
公正証書の作成・署名
公証役場で公証人が遺言書を読み上げ、遺言者と証人2名が署名・押印。公証人が認証して完成
正本・謄本を受け取る
原本は公証役場に保管。遺言者は正本・謄本を受け取る(謄本は相続手続き時に使用)
公正証書遺言の費用目安(公証人手数料)
| 遺産総額 | 公証人手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 約5,000円 |
| 100〜200万円以下 | 約7,000円 |
| 200〜500万円以下 | 約11,000円 |
| 500〜1,000万円以下 | 約17,000円 |
| 1,000〜3,000万円以下 | 約23,000円 |
| 3,000〜5,000万円以下 | 約29,000円 |
| 5,000万〜1億円以下 | 約43,000円 |
| 1〜3億円以下 | 約43,000円〜95,000円 |
※受け取る方が複数いる場合、各受取人の財産額ごとに手数料が加算されます。弁護士・司法書士への依頼料は別途5〜20万円程度。
05遺言書に書けること・書けないこと
法的効力がある(遺言事項)
- 財産の分割方法の指定(相続させる・遺贈する)
- 相続分の指定・遺産分割方法の指定
- 相続人の廃除・廃除の取消
- 子の認知
- 後見人の指定・後見監督人の指定
- 祭祀(葬儀・お墓)の主宰者の指定
- 遺言執行者の指定
法的効力がない(付言事項)
- 家族へのメッセージ・感謝の言葉
- 葬儀・お墓の希望(効力なし・ただし記載する価値あり)
- 臓器提供・献体の意思表示(別途書類が必要)
- 財産以外のお願い事・道徳的な願い
- 家族への要望(仲良くしてほしいなど)
※付言事項は法的効力はないものの、家族への想いとして記載する価値があります。エンディングノートにも記録しましょう。
06遺留分とは?配分ルールを確認
遺留分とは、一定の相続人に民法上保障された最低限の相続分です。遺言書で遺留分を下回る配分をしても、侵害された相続人から遺留分侵害額請求(金銭の支払い請求)が可能です。
遺留分の割合一覧
遺留分侵害額請求の時効は「遺留分侵害を知った日から1年」です。遺言書に遺留分を侵害する内容が含まれる場合、相続開始後に紛争になるリスクがあります。事前に弁護士に相談することをお勧めします。
07遺言書の保管方法
せっかく作成した遺言書も、適切に保管されていなければ発見されない・紛失するリスクがあります。
法務局(遺言書保管所)に申請保管 ★推奨
- 紛失・変造・破棄のリスクがない
- 相続開始後の家庭裁判所による「検認」手続きが不要
- 相続人が保管証明書を請求して存在を確認できる
- 全国の法務局から申請可能
公証役場に原本保管(公正証書遺言の場合)
- 原本が公証役場に永久保管されるため紛失リスクがない
- 全国の公証役場で謄本請求が可能(遺言検索システム)
自宅保管(封筒に入れて保管)
- 費用がかからない
- いつでも内容を確認・書き直しができる
08遺言・相続に役立つ無料ツール
09よくある質問
①全文を自筆で書く②日付を記載する③氏名を自筆で書く④押印する の4つが必須要件です。財産目録のみパソコン作成が認められていますが、毎ページに署名・押印が必要です。1つでも欠けると遺言書全体が無効になります。遺言書チェッカーで法的要件を事前にチェックできます。
公証人への手数料は遺産総額によって変わります。遺産総額が1,000万円以下の場合は約2.3万円、3,000万円以下は約4万円、1億円以下は約9.5万円が目安です。弁護士・司法書士に作成支援を依頼する場合は別途5〜20万円程度が必要です。
自筆証書遺言は原則として全文自筆が必要です。パソコン(ワープロ)で作成した遺言書は無効です。ただし「財産目録」部分のみパソコン作成が認められています(民法改正、2019年1月13日施行)。財産目録には毎ページに自筆の署名と押印が必要です。
自筆証書遺言は法務局(遺言書保管所)への申請保管が最も安全です。紛失・変造リスクがなく、相続開始後の家庭裁判所による検認手続きも不要。申請費用は3,900円。公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため紛失リスクがありません。
遺留分とは、配偶者・子・親に法律上保障された最低限の相続分です。遺言書があっても遺留分を侵害することはできません。遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求(金銭請求)」ができます。遺産分割シミュレーターで各相続人の遺留分を確認できます。
遺産が多い・不動産がある・相続人間でトラブルが予想される場合は公正証書遺言がおすすめです。費用はかかりますが無効リスクが低く、検認手続きも不要です。遺産がシンプル・費用をかけたくない場合は自筆証書遺言(法務局保管)が選択肢です。
遺言書に書けること(遺言事項)は主に①財産の分割方法の指定②相続人の廃除③認知④後見人の指定などです。法的効力がないこと(付言事項)は「仲良くしてください」などの道徳的な希望・感謝のメッセージ・葬儀の希望などです。ただし付言事項は家族への想いとして記載する価値があります。
遺言書がない場合は「法定相続」として民法に定められた割合で相続人が財産を引き継ぎます。相続人間で話し合い(遺産分割協議)で分け方を決めることもできますが、全員の合意が必要です。特に不動産・事業・海外資産などがある場合、遺言書がないと手続きが複雑化し、家族間のトラブルになりやすいため、早めの作成をお勧めします。