目次
01生前贈与の基本と目的
生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を他者(子・孫・配偶者など)に無償で渡すことです。相続と異なり、渡す側が元気なうちに意図的に財産を移転できるのが特徴です。
生前贈与の主な目的は次の3つです。
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相続税の節税
生前に財産を移転して相続財産を減らし、相続税の負担を軽くする
🎓
特定の目的への支援
教育費・住宅購入・結婚など、子や孫の人生の節目に経済的な支援をする
👨👩👧
財産の早期移転
本人が生きているうちに財産の行き先を決め、相続トラブルを予防する
ただし、贈与には贈与税がかかります。贈与税の仕組みを理解した上で、計画的に進めることが大切です。
02暦年贈与とは?110万円の非課税枠を解説
暦年贈与とは、1月1日から12月31日の1年間で受け取った贈与の合計額が基礎控除110万円以下なら贈与税がかからない制度です。この110万円はもらう側(受贈者)1人あたりの控除額です。
暦年贈与の節税シミュレーション
※ 受贈者1人あたりの試算。複数人に贈与すれば移転額はさらに増えます。
⚠️ 注意:定期贈与と認定されるリスク
毎年同額を決まった時期に贈与し続けると、「最初から合計額を贈与する約束があった」と判断(定期贈与)され、合計額に一括して贈与税がかかる場合があります。毎年贈与額を変えたり、贈与契約書を年ごとに作成するなどの対策が有効です。
03贈与税の税率表(一般税率・特例税率)
贈与税には一般税率と特例税率の2種類があります。特例税率は直系尊属(父母・祖父母など)から18歳以上の子・孫への贈与に適用される低い税率です。
| 基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 特例税率(直系尊属→18歳以上) | ||
|---|---|---|---|---|
| 税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
| 200万円以下 | 10% | — | 10% | — |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
計算例(特例税率):親から子へ500万円贈与した場合
①課税価格 = 500万円 − 110万円(基礎控除)= 390万円
②税額 = 390万円 × 20%(税率)− 30万円(控除)= 48万円
04主な贈与制度の比較
暦年贈与
✓ メリット
年110万円まで非課税・手続きが簡単・毎年繰り返し活用できる
✗ デメリット・注意点
少額ずつしか移転できない・死亡前7年以内の贈与は相続財産に加算
👤 こんな方に適している
長期計画で少しずつ節税したい方・相続まで期間がある方
相続時精算課税
✓ メリット
一度に大きな財産を移転できる(累計2,500万円+毎年110万円非課税)・値上がり資産に有利
✗ デメリット・注意点
同じ贈与者への暦年贈与に戻れない・相続時に加算されるため節税効果は限定的
👤 こんな方に適している
まとまった財産を早期に移転したい方・値上がりが期待される財産を贈与したい方
教育資金一括贈与
✓ メリット
最大1,500万円が非課税・教育費として長期間活用できる
✗ デメリット・注意点
金融機関への手続きが必要・30歳時点で未使用分は課税対象・2026年3月31日まで
👤 こんな方に適している
孫・子の教育費を早期に準備したい祖父母・父母
住宅取得等資金贈与
✓ メリット
最大1,000万円が非課税(省エネ住宅)・暦年贈与と併用可能
✗ デメリット・注意点
住宅要件・収入要件あり・2026年12月31日まで
👤 こんな方に適している
子・孫が住宅を購入・増改築するタイミング
05生前贈与加算(7年ルール)に注意
相続人への暦年贈与は、死亡前の一定期間分が相続財産に加算されて相続税が計算されます。2024年1月1日以降の贈与分から段階的に加算期間が延長されます。
加算期間の移行スケジュール
※ 4〜7年前の加算贈与については合計100万円を控除できます。
※ 相続人以外(孫など)への贈与は加算対象外(相続時精算課税選択者を除く)。
⚠️ 早めの贈与が肝心
7年ルールの完全適用(2031年以降)に向けて、死亡直前の贈与は節税効果が出にくくなります。早期から計画的に贈与を始めることが重要です。また孫への贈与(相続人でない場合)は加算対象外のため、孫への贈与を活用した節税も効果的です。
06贈与税シミュレーターで試算する
07贈与税の申告・手続き
申告が必要なケース
- 年間の贈与合計額が110万円を超える場合
- 相続時精算課税を選択した年(110万円以下でも申告必要)
- 住宅取得等資金の非課税特例を受ける場合
- 教育資金一括贈与特例の口座を開設した年
申告・手続きの流れ
- 贈与があった翌年2月1日〜3月15日が申告・納付期限
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書作成
- 税務署へ提出(e-Tax・郵送・持参)
- 原則として現金一括払い(延納制度もあり)
💡 贈与契約書を必ず作成しよう
110万円以下の贈与は申告不要ですが、後で「贈与ではなく借入だ」「証拠がない」などのトラブルを防ぐため、毎年贈与契約書を作成しておくことを強くお勧めします。日付・金額・双方の署名押印を記載した書面を保管しましょう。
09よくある質問
暦年贈与とは、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の合計額が基礎控除110万円以下であれば贈与税がかからない制度です。受贈者(もらう側)1人あたりの控除で、複数の人から受け取る場合は合算して判断します。例えば父から80万円・母から40万円もらった場合、合計120万円となり10万円分が課税対象になります。贈与税シミュレーターで具体的な税額を確認できます。
1年間の贈与合計額が110万円(基礎控除)を超えると贈与税が課税されます。税額は(贈与合計額 − 110万円)× 税率 − 控除額 で計算します。税率は10〜55%の累進課税です。直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上の子・孫への贈与は「特例税率」が適用され、一般税率よりやや低い税率になります。贈与税シミュレーターで自動計算できます。
60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫への贈与に選択できる制度です。累計2,500万円まで贈与税がかからず(毎年110万円の基礎控除は別途適用)、贈与者が死亡した際に相続財産と合算して相続税を精算します。一度選択すると同じ贈与者への暦年贈与に戻れないため、長期計画が必要です。贈与財産が値上がりした場合に有利になります。
死亡前の一定期間内に行われた相続人への暦年贈与は、相続財産に加算されて相続税が計算される制度です。2024年1月以降の贈与から加算期間が「3年→7年」に段階的に延長されています(2031年1月以降の相続から7年ルール完全適用)。ただし4〜7年前の贈与については合計100万円を控除できます。節税効果を狙った駆け込み贈与を防ぐ目的での改正です。
年間の贈与合計額が110万円を超えた場合や、相続時精算課税を選択した年(基礎控除110万円以下でも申告が必要)は贈与税の申告が必要です。申告・納付期限は翌年の2月1日〜3月15日です。無申告のまま税務調査で発覚すると無申告加算税(15〜20%)・延滞税が課されます。110万円以下の贈与は申告不要ですが、証拠として贈与契約書を作成しておくと安心です。
長期間(10〜20年)の暦年贈与を続ければ相続財産を減らして相続税を節税できます。例えば毎年110万円を20年間贈与すれば2,200万円を非課税で移転可能です。ただし贈与税率が相続税率より高い財産額帯では相続の方が有利な場合もあります。また生前贈与加算(7年ルール)により死亡直前の贈与は効果が薄くなります。早期かつ計画的な贈与がポイントです。
30歳未満の子・孫への教育資金として、父母・祖父母が金融機関の専用口座(教育資金管理契約)に一括贈与する場合、1,500万円まで(学校等以外は500万円まで)贈与税が非課税になる特例です。2026年3月31日まで延長。使途証明書の提出が必要で、30歳になった時点で未使用分は贈与税(相続時精算課税利用者は相続税)の課税対象となります。
父母・祖父母から住宅取得・増改築のための資金を贈与された場合、省エネ等住宅は1,000万円まで、一般住宅は500万円まで贈与税が非課税になる特例です(2026年12月31日まで)。受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上・合計所得金額2,000万円以下が条件。暦年贈与の110万円とは別枠で活用できます。
父母・祖父母から18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金を一括贈与する場合、1,000万円まで(結婚関係は300万円まで)贈与税が非課税になる特例です(2025年3月31日まで。2027年3月31日まで延長予定)。使途証明書の提出が必要で、50歳になった時点の未使用残高は贈与税の課税対象になります。
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入資金)を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に2,000万円まで贈与税が非課税になる「配偶者控除(おしどり贈与)」があります。ただし同じ配偶者からこの特例を受けられるのは一生に一度のみです。また相続の場合も配偶者控除(1億6,000万円まで非課税)があるため、どちらが有利かは個別に検討が必要です。